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MR.NOBODY『ミスターノーバディ』(2009)

『ミスターノーバディ』原題:MR.NOBODY

監督:ジャコ・ヴァン・ドルマル

出演:ジャレッド・レト、ダイアン・クルーガー、サラ・ポーリー、リン・ダンファン

2092年人類は永久再生される細胞を手に入れ死ぬ事の無い世界を作っていた。永久再生をほどこさず、人類最後の死ぬ人間として118歳を迎えたジャレット・レト演じるニモ・ノーバディ。彼の最期の姿は全世界に中継され、人類全てが注目していた。しかし彼にははっきりとした生きた記憶が無く、医師の催眠治療で過去の記憶を掘り起こしていく。バタフライ効果によって出会った両親とそこからの自身の誕生、そして様々な選択の連続を繰り返す。時にはその選択を巻き戻し違う選択の人生を歩む。一体どれが本当の記憶で本当の人生だったのか?誰と出会い恋をして誰と生涯を過ごす選択をしたのか?無限に広がる選択の結末は?


以下ネタバレ含みます。ご注意を。感想はあくまで個人的な意見です。

時間軸がグチャグチャで主人公の選択肢によってあっちに行ったりこっちに行ったりな人生、また巻き戻して違う選択をするので複雑で分かりにくそうなのですが、それがなんとも素晴らしい映像と分かりやすいつくりの(登場キャラクターそれぞれに特徴を持たせている)おかげで思ったほど混乱せず、スルスルと謎解きのような感覚で観ることができます。ジャコ・ヴァン・ドルマル監督の演出がすごい!

mrnobody

全体のイメージは未来都市が舞台になってたり、永久細胞で死なない人類だとか火星観光の場面や科学番組の司会場面も出て来るし、時間軸があやふやなパラレルワールドな感じでSFちっくですが、実はこの映画ラブストーリーだと思うんです。(みなさんの楽しみ方があるのであくまで個人の勝手な意見ッス)物語には幼馴染の三人の女の子が登場します。『アンナ』『エリース』『ジーン』記憶の中でニモはそれぞれと恋人になり結婚するんですが、それぞれとの出逢いがあってそれも選択によってうまれます。で、この中でニモが一番好きだったのが『アンナ』結論から言うと映画自体の訳の分からない記憶の世界の話や未来の世界、これらをすべて含めてニモが9歳の時に両親の離婚でどちらに付いて行くか迫られて、選択しなければならなかった場面のほんの数分間の頭の中の世界だったんです(これも個人見解ッスというかラスト近くで爺さんニモがそう言ってますけどね)なぜかというと、両親の離婚のきっかけは母親がアンナの父親と不倫し始めたからで、そこでどちらについていくか迫られたニモは想像をしまくるんです、母親についていくとアンナと住むことになって一時的には幸せだけど、アンナとの関係が親にバレて離ればなれにさせられ、その後も運命に翻弄されてなかなかうまくいかない。それじゃぁと父親についていくと父親は意気消沈していて(なぜか車椅子で障害者になってる)面倒を見なきゃいけなくて暗い生活を強いられる、そんな中で今度はエリースと出会って結婚まで行くが、エリースには出会いの時から片思いの相手がいて、そいつを生涯思ってたせいであげくにはうつ病になり別れてしまう(そこのラストじゃ家族を捨てて出て行ったエリースは理髪店で働いてて、そこで片思いの相手と偶然会うけどそいつが整形しまくってて会っても気が付かないとか。この辺は妄想で復讐っぽいw)そんでその選択肢の中のもう一つにエリースをあきらめたバージョンがあって、あてつけでジーンと付き合い結婚までしてお金持ちにもなる。一見幸せそうに見えるけどあくまで仕方ないうえの最期の選択だから意地でも理想になってやる~って結果なので最終的にはジーンに見透かされる(ここでは何かジーンに対して常にすまなそうな感じ)ってことで三人共にいい結果になっていないように見えますが、実はアンナとの関係には最後まで諦めきれない。だから9歳の自分に戻った時にバタフライ効果を起こして再び出会う結末を創り上げるんです(まあそれも創造なんですが、この辺がゴッチャになってわかりにくいw)それに創造の世界でアンナとだけはラブラブでいて他の二人にはそんな場面一つもない。未来世界で爺ちゃんになって死ぬところでも世界への遺言は「アンナ・・」でしたしね。そもそも水に対する恐怖心がキーワードになってたりするんですが、それもプールでアンナが飛び込む姿に釘付けになって真似して飛び込んだらカナヅチになったってのがはじまり。ぜーんぶアンナとの関連で世界が成り立っているんです。そうやって9歳の男の子の創造世界として観るとちょっと微笑ましく感じました、あーこういう想像したよなーって感じ(ただ凄すぎますけど)とにかくジャレット・レトがすべての人生で演じ分けているのは素晴らしいです、子供時代それぞれの役者さんもどこかレトっぽくて可愛い。ただ爺さんになった時の笑い声がバットマン新シリーズのジョーカーまんま!(こっちの方が古い作品ですが)気になり出してしょうがなかった。あとスーツ姿で真面目なレトがどうしてもジム・キャリーに重なってトゥルーマンショウみたいだったあ(笑)(決してケチをつけてる訳ではありません)なんにしても映画としての作品の創りはかなり素晴らしいので独特の世界観に惑わされ、存分に楽しめると思います。ぜひ観てください!

Illustration & Text by PONYBOY

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