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RAPTURE season1-1 “LOGIC”

Netflixオリジナル作品。『RAPTUREヒップホップの世界』は名だたるHIPHOPアーティストをフィーチャーし、それぞれのアーティストに密着とインタビューを通して彼らの背景や内面に迫るドキュメンタリー番組。音楽好き、ましてヒップホップファンにはたまらないシリーズになりそうです。

シーズン1-1のまず最初にフィーチャーされたアーティストは今、大注目の若手実力派ラッパー”LOGIC(ロジック)” 。全米チャートでも1位になりビッグセールスとなった話題のアルバム”EVERYBODY” が出来る過程や、特異な彼の生い立ち、その後の半生など、楽曲に影響を与えるバックボーンは一体どんなものなのか?赤裸々に綴られた作品です。


以下ネタバレ含みます。ご注意を。感想はあくまで個人的な意見です。

1990年アメリカのメリーランド州で黒人の父親と白人の母親の間に生まれ、両親は共にアルコールとクラック中毒者、兄弟もコカイン製造する環境などとかなりドープ・・母親からは「ニガー(マジか!実の母親だろ!)」と呼ばれ、8歳ぐらいの時には意味のない虐待を受ける日々だったと告白しています。父親と暮らしてはいたようですが、5歳ぐらいの時、クラックを買いに行ったまま街中の車中に放置されていたとか。こんな状況に見るに見かねた友人の家族が彼を家に招き入れてくれました「ゴッドマザー」と呼ばれる”MARY JO LAFRANCE”(メアリージョーラフランス)さん。まだ少年期だったロジックにとって彼女の存在はかなりの救いだったんでしょう。

rap1-1

問題の多い家族でしたが、これはコンゴ歌手でもあった父親”BOBBY ‘SMOKY’ HALL”(ボビー’スモーキー’ホール)の影響で常に音楽がそばにあったようです。母親が「シナトラ」父親は「プリンス」をよく聴いていたらしいです。(後にロジックは自らを「ヤングシナトラⅢ」と呼ぶ曲を出しますね)その後14歳の時タランティーノの”KILL BILL”のサントラを担当してた”ウータンクラン”の”RZA”にシビれラップを本格的に始めます。そう言えば最新のアルバム名は”Bobby TarantinoⅡ”ここにもリスペクトが出てますね。

そしてラッパーの”BIG LENBO”(ビッグレンボ)やプロデューサーになる”6IX”(シックス)と出会う、これが大きな出会いだったようです(ビッグレンボが”psychological”サイコロジカルと名乗っていたロジックを縮めて呼びLogic”ロジックになったよう)その後もロジックは成功するまでの道のりは困難で仕事を転々としならがホームレスのような暮らしだったと語っていました。しかし成功を夢見てロジックたちはミックステープを作り出していきます。その為に彼らは他のアーティストと違うアクションを起こします、ファンに直接会って作品を売ったりしてダイレクトに関係を作り上げる!それは現在でも続いていて、ロジックは他のアーティストと決定的に違い、ストリーミングが主流の現在の音楽シーンの中で驚くことにCDの実売が売上げの8割を占めるといいます。

FacebookなどSNSで広がった彼の作品を大手レーベル”Def Jam”が目をつけ契約。1作、2作とリリースし、3作目”Everybody”で遂にトリプルプラチナを達成。しかし作品は売れたが実際のライブはどうなのか?という外野のプレッシャーがあった様子。以前ある日本のラッパーに聞いたことを思い出しました。「CDがたくさん売れたけど、実際にライブでは全然声も出ないし、楽曲も少なくてダメダメなニセ物アーティストもいたりしますよ」やはりアーティストは現場主義というかライブでお客さんを盛り上げてなんぼって世界ですよね。ロジックもそのプレッシャーをはねのけるかのように、自身を追い込んでいるように見えました。あるインタビューでは自分がファンの為じゃなく、誰の為にやっているのかが分からなくなり『成功や幸せはお金じゃ買えない』とも語っていたようです。不安障害になったのはバランスが悪かったと本作で語っていました。

彼の代表曲”1-800-273-8255″は自殺予防のホットラインを曲名にした『生きろ』と呼びかける、彼自身の体験も入ったメッセージの強い素晴らしい作品。多くの人に共感を持たらしグラミー賞ノミネートにもなりました。作中でプロデューサーが「自分の弱い部分をさらけ出すのはヒップホップのキャリアに良くない、しかしそれをロジックが変えつつある」とありました。これまでのヒップホップのメッセージは『問題をたくさん抱えているけど負けない!オレは強いぜ!だからお前らも頑張れ!』って強く生き抜いたからこそのパワータイプが多かったと思います。しかしロジックはインタビュー中にこれまでの軌跡を思い、現状の幸せにカメラの前で涙してしまうほど素直な人です。作品にもそのままの自分をさらけ出せて『無理するな、自分らしく生きればいいじゃないか』とファンと並んで語り合うタイプ。彼のこうした部分がこれまでラップに興味のなかったファンの目を向けさせたのかもしれません。最新の情報では莫大な契約金が入り考え方が変わったそうで、かといって「お金でなんでも買える」と変化したのではなく(笑)これだけの額だとお金の問題からは解放され、自由に音楽活動ができると思うようになったとか。また一層ファンの為に活動するというロジックから目が離せません。

Illustration & Text by PONYBOY 

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